TOKYO YEAR ZERO デイヴィッド・ピース

TOKYO YEAR ZERO

TOKYO YEAR ZERO

素晴らしい。
決定的瞬間の東京零年であろうと終わることにはならないし始まることにもならない。
荒廃した日本はいぜんと存在している。
絶え間なく挿入される病んだノイズは読んでいて息苦しい。
正直慣れるまでは読みづらくて少しつらかった。
しかし幻想的な雰囲気を醸しつつもミステリとしての着地点は綿密に用意されている。
《東京三部作》の第一作ということで続編が楽しみだ。
以下ネタバレあり。
解説にあるようにアイデンティティの改変/乗っ取りが主題となっているけれど、
あのノイズは主人公の現実が揺らいでいるというある種の伏線だったのか。
誰かに成り代わることは実は容易なことで誰が役割を果たそうと関係のないこと。
それは犯されて殺された女性たちにも云えることなのかも。実際身元が特定されていない死体もあるのだし。
終盤の方を読んでいるとき「双生児」のことを思い浮かべていた。
「双生児」が歴史の改変ならこの作品は個人の改変だなぁとか。